別冊春号 2021のシェヘラザードたち
第7夜 げに恐ろしきは気道狭窄—Poiseuilleの法則の功罪
川名 信
1
1手稲渓仁会病院
pp.39-44
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200197
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小児麻酔学会では,気道管理,特に上気道狭窄症例に関する演題発表は大変盛り上がるセッションの一つである。これまでのシェヘラザードたちの中にも小児の困難気道の話が何回か登場している。麻酔科医なら誰でも知っているように,換気は物理的なガス交換であり,薬物で代替治療できるものではない。困難気道が予想される場合,成人では事前に体外式膜型人工肺(ECMO)を装着してから麻酔導入することもできるが,小児ではそうはいかない。
さまざまな困難気道を伴う先天性奇形が知られているが,実際の困難気道の対応は症例ごとに異なる。気道確保では,手技,デバイスの選択,時には薬物治療についても麻酔科医の知識・経験・技量が問われる。さらに気道狭窄ではPoiseuilleの法則という物理法則が立ちはだかる。気道抵抗は(層流では)半径の4乗に反比例することは有名である。しかしその法則によれば,小児ではもともと気道が細いために成人なら問題にならない狭窄部の直径の1mmの違いがまさに生死を分けることがある*1。そこに小児麻酔の醍醐味を感じるのは私一人ではないだろう。
今夜は,私が経験してきた“修羅場”をお話ししよう。
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