別冊秋号 周術期管理
PART5 周術期チーム医療のこれから
47 麻酔科医のタスクシフト
落合 亮一
1
1元 東邦大学医療センター大森病院 麻酔科
pp.305-311
発行日 2020年9月15日
Published Date 2020/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200188
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現在は2020年4月。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を防ぐために,外出自粛状態の自宅で本稿を書いている。世界規模のアウトブレイクに歯止めがかからず,特に,米国やブラジルそしてインドでは急増する重症患者への対応が追いつかず医療崩壊が生じている。誰が,このような事態を予想できたであろうか。
新型インフルエンザによる呼吸不全が世界を覆ったのは2009年のことで,このH1N1型インフルエンザウイルスによって生じたパンデミック状態は,比較的小規模な感染拡大で終息したが,今回は,その目処も立たない状況である。欧州における医療崩壊を前に,ドイツやスイス,リヒテンシュタインなどの隣接国が医療支援を提供し始めており,重症患者の搬送が広域に行われつつある。これも,立派なタスクシフトである。
また,2007年に拡大するHIV感染に対応するために,特に新興国における医療レベルが低く,医療経済的にも対応が難しい状況を前に,WHOがHIV/AIDS感染拡大について『Task shifting to tackle health worker shortages』1)という声明を出し,図1のような支援策を提唱している。職種ごとのタスクを専門性のより低い職種へとシフトし,最終的には社会が相互支援可能な組織づくりをするという提案である。
では,COVID-19の感染拡大に対応する広域支援やWHOのHIV/AIDS支援で問われるタスクシフトと日本の麻酔科医のタスクシフトにはどのような共通点・相違点があるのか。日本の医師・看護師の働き方改革に端を発した麻酔科医のタスクシフトについて考えてみたい。
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