特集 透析診療のすべて
Part 2 透析管理の基本と原則
【コラム⑤】透析患者の痒み①皮膚科医の視点—CKDaPのメカニズム,治療アプローチ
宮村 智裕
1
Tomohiro MIYAMURA
1
1くまもと森都総合病院 皮膚科
pp.398-405
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901143
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血液透析(HD)患者の60〜80%に痒みが生じることは以前から報告されており,現在は慢性腎臓病関連皮膚瘙痒症(CKDaP*1)と呼称されている。2020年末における日本の維持透析患者数は347,671人と年々増加しており1),非常に多くの透析患者が痒みに悩まされている。
HD患者の診療内容が予後に与える影響を検討し,最適な治療法を明らかにすることを目的とした国際的多施設前向き観察研究であるDOPPS*2において,強い痒みは睡眠障害やうつ状態を起こすだけでなく,心血管イベントの発生にも関連し,死亡リスクも上昇させる重大な合併症であることが明らかになった2)。海外の報告では,糖尿病合併が痒み発生のリスクとされており3),DOPPSのなかでも日本人データ6,480人分を解析したJ-DOPPSでは,高齢,男性,高血圧,腹水,C型肝炎,Ca高値,P高値,副甲状腺ホルモン(PTH*3)高値などが,中等度以上の痒みを引き起こすリスク因子であることが示された4)。
1996〜2001年のDOPPS Phase 1と2012〜2015年のDOPPS Phase 5を比較すると,とても強い痒み,ないし極度の痒みを訴える患者は28%から18%まで減少している*4ものの(図1)5),まだ十分にコントロールされているとは言い難い。
CKDaPの病態は,全容がいまだ解明されておらず根本的な治療は存在しないが,本稿では治療のために必要な知識である痒みのメカニズム,ならびに治療方針について解説する。
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