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心房頻拍atrial tachycardia(AT)は,頻拍メカニズムにHis束より上の組織が関与する,いわゆる上室頻拍supraventricular tachycardia(SVT)を構成する要素の1つである。日本のガイドラインでは,「洞結節より離れた固有心房筋由来の規則的な心房拍数100〜250bpmの頻拍」と定義している1)。一見シンプルそうな表現とは裏腹に,この「心房頻拍」は現実的にはいろいろと難しい,というか「ややこしい」(冒頭から「本質」を述べるのはやや気が引けるが)。診断が困難というより,分類・定義に煩雑で曖昧な点があるからだ。特に「心房粗動」や,時に一部の「心房細動」と区別が難しい場面もある。そもそも呼称や分類が,通常の体表面心電図所見と心腔内から得られる心臓電気生理学的な機序の「ごちゃまぜ」となっているためだ。
どの分野にもあるが,新知見や技術革新による従来の方法論の塗り替えが,まさに「心房頻拍」にも起きていると考える。数ある上室頻拍のなかでも,本頻拍については誤用が目立つとの印象をもつのは筆者だけではないだろう。発言者の専門性や診断手段だけでなく,時に嗜好とも思える主義・主張に基づき,さまざまな場面でシンボウヒンパクという呼称が用いられている。
残念ながら,この「心房頻拍あいまいすぎ問題」をクリアカットに解決する技量は筆者にはない。ただ,実地医家の面々の多くは,体表面,すなわち「ふつうの」心電計による非侵襲的な記録波形をもとに不整脈診断や医療判断を行うと推察される。それを意識し,また本稿の依頼内容にも応えるべく,体表面12誘導心電図を中心に,やや私見も交えながら,心房頻拍をわかりやすく解説してみたい。
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