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日本での心不全入院患者は年間約1万人のペースで増加しており,2030年には心不全患者が約130万人に達すると推計されている1,2)。これは世界中で同様の傾向にあり,「心不全パンデミック」と称されている3)。その背景には高齢化社会の進行が存在する。2011年までに登録された日本での心不全患者の平均年齢は70歳前後と報告されていたが4,5),最近の報告6)(登録年2011〜2015年)では78歳前後であり,確実に高齢化傾向にある。
心不全は,入退院を繰り返しながら心機能が徐々に低下した結果としての心不全死,あるいは致死性不整脈などで突然死に至る予後不良の疾患である。収縮能の低下した心不全に対するACE阻害薬やβ遮断薬などの効果を証明した数多くの大規模臨床試験の結果,2000年代以降,心不全薬物療法は目覚ましい発展を遂げた。ところが,急性心不全の院内死亡率は約8%1,7),1年死亡率は7.3%程度と依然として高く8),予後改善に寄与するさらなる介入方法の開発や診療の質改善が求められている9)。
一方で,心不全患者に対し,ルーチンにガイドラインで定められた至適薬物療法を施行するのみでは,さらなる予後改善を得るのは極めて困難である。それを打破すべく,心不全管理プログラム,患者によるセルフケア(自己管理)が近年発展,推奨されてきたが10),それらに対するアドヒアランスはまだまだ低いといわざるを得ない11)。
本稿では,心不全入院中に施行,あるいは教育可能な,心不全再入院を予防するためのプログラム,患者によるセルフケアについて概説し,特に高齢心不全患者の問題点とそれに対する指導法をはじめ,実践的戦略について述べていきたい。心不全入院中は,患者に心不全について教育介入できる最高のチャンスであり,多職種で連携して患者とともに心不全再入院予防にあたることが肝要である。
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