特集 循環器疾患1
8.非ST上昇型急性冠症候群のマネジメント総論—多様な病態を含み,それだけに患者個々のリスク評価が重要となる
兼井 由美子
1
Yumiko KANEI
1
1Mount Sinai Beth Israel, Department of Cardiology
pp.723-732
発行日 2015年9月1日
Published Date 2015/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900230
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急性冠症候群(ACS)とは,急性の冠動脈血流不全によって起こる心筋虚血や心筋梗塞の総称である。ACSには冠動脈病変の急激な変化によって起こるもの(プラーク破裂など)と,心筋における酸素の需要と供給のミスマッチから起こるもの(需要>供給による虚血)がある。冠動脈が完全閉塞することによって起こるST上昇型心筋梗塞(STEMI)に比べて,非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)には多様な病態が含まれ,冠動脈が完全に閉塞していてもSTが上昇していない,冠動脈に急性の病変があっても完全閉塞していない,重症の多枝病変による虚血がある,慢性冠動脈疾患が酸素需要の増加によって虚血を起こす,また,冠動脈に病変がない,などの場合が考えられる。できるだけ早期に閉塞した冠動脈の再建を行うことが治療方針であるSTEMIに比べて,NSTE-ACSの治療方針は個々の患者の病態によって異なり,患者個々のリスク層別化に基づき決められる。
NSTE-ACSのうち,心筋逸脱酵素の上昇があるものは非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI),心筋酵素の上昇がないものは不安定狭心症(UA)と診断される。緊急的に冠動脈造影が必要となるSTEMIに目が行きがちであるが,NSTEMIの長期予後はSTEMIと同等かもしくは悪いと考えられ,予後改善のためには個々の患者の注意深い評価が重要となる1)。
本稿では,NSTE-ACSのマネジメントに関して,2014年のAHA/ACC*1ガイドライン2),2011年のESC*2ガイドライン3),2012年の日本のガイドライン4)を参考にまとめる。
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