Japanese
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特集 症状別・疾患別にみた注意を要する心電図所見
非ST上昇型急性冠症候群
Non-ST Elevation Acute Coronary Syndrome
中島 啓裕
1
,
安田 聡
1
Takahiro Nakashima
1
,
Satoshi Yasuda
1
1国立循環器病研究センター心臓血管内科
1Department of Cardiovascular Medicine, National Cerebral and Cardiovascular Center
pp.222-228
発行日 2016年3月15日
Published Date 2016/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205915
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はじめに
急性冠症候群(ACS)は心筋救済のための早期再灌流が最も重要であり,それ故診断が遅れてはならない.現在までに多くの生化学・画像診断が発達しているが,12誘導心電図検査は,ACSの診断のみならず重症度評価,治療方針の決定さらには予後予測において現在においても中心的な役割を担っている.ST上昇型急性冠症候群(STE-ACS)は,責任冠動脈が完全閉塞している(貫壁性)ことを示しており,心電図変化も比較的同定しやすいことが多い.一刻も早い冠動脈血行再建の有効性が確立されており,わが国においては多くの施設で緊急での経皮的冠動脈インターベンション(primary PCI)が施行される.一方,非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)は,責任冠動脈が完全閉塞には至っていない非貫壁性(心内膜下)虚血を示す.あるいは多枝病変で側副血行も関与することが多く,心電図変化も判断しづらいことがしばしばある.冠動脈が完全閉塞に至っていないという点から,STE-ACSと比較して時間的余裕もあるが,その分,個々の症例ごとの的確なリスク評価や長期予後も踏まえた最善の治療方針の決定が求められる.STE-ACSと比較して,NSTE-ACSは梗塞サイズは小さいことが多いものの,STE-ACSと同等に予後が悪いことが知られている(図1)1).NSTE-ACSの病像スペクトルの広さが診断を難しくし,さらには治療の遅れへとつながり,結果的に患者の長期予後を悪化させることにつながると考えられる.本稿では,NSTE-ACSの心電図診断のコツとピットフォールについて述べていく.
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