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急性冠症候群とは
急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)とは冠動脈硬化性病変に起因した冠動脈の急激な血流途絶,もしくは血流低下によって引き起こされる心筋虚血に関連した一連の疾患の総称である.その疾患群には急性心筋梗塞(Q波梗塞,非Q波梗塞),不安定狭心症,虚血性心臓突然死が含まれるが,そのいずれにも共通する病態として不安定粥腫(unstableplaque,vulnerable plaque)の存在が重要である.不安定粥腫とは病理学的には図1に示すような薄い線維性被膜(thin fibrous cap)と豊富な脂質成分(lipid core)によって構成される冠動脈硬化性病変の名称であり,ACSの発症機転と考えられている粥腫の破綻やびらん,それに引き続く血栓形成に深く関わる,いわばACSの主役ともいうべき病態である.これまでの病理学的,血清学的検討からは,不安定粥腫の形成には酸化LDLに加えてマクロファージや種々の炎症性サイトカインが関与しており,不安定狭心症や急性心筋梗塞症例で血中CRPが高値を示すなどいわゆる炎症が病態の基礎であることが明らかにされてきた.さらに血管内超音波(intravascular ultrasound:IVUS)や血管内視鏡(coronary angioscopy)などの診断ツールの開発・普及により,生体内において血管全体を含めた粥腫形成の過程や不安定粥腫,そしてその破綻像,びらん,血栓形成を捉えることができるようになり,その病態の理解はさらに深まった.
一方,虚血性心疾患に対する冠インターベンション治療は近年著明な進歩をみせており,その効果には目を見張るものがある.しかし,ACSの発生そのものを抑制する有効なデバイスは未だ存在せず,ACS発症による,あるいはまたACSに引き続く心筋壊死からの心機能低下は心臓死の重要な原因となっている.それゆえに,ACSに対する一次予防,二次予防の重要性が再認識されており,高コレステロール血症治療薬であるHMG-CoA還元酵素阻害薬,いわゆるスタチンは,大規模臨床研究の結果からACS発症抑制に有効であることが多数報告されている.基礎的研究ではスタチンは単なるコレステロール低下による効果のみならず,抗炎症作用などを併せ持ち,多面的作用からACS発症を抑制する効果が認められており,最近の心血管疾患治療薬のトピックスとなっている.
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