- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
この章では,急性冠症候群acute coronary syndrome(ACS)という幅広い患者層に迅速に対応していただくための,ガイドライン(2007 ACC/AHA1)と2011 ACCF/AHA Focused Update2))に準拠したリスク層別化risk stratificationの考え方を取り扱います。なお,基本的に内容は,非ST上昇型急性冠症候群non-ST elevation ACS(NSTE-ACS)に限定しています。ACSの詳しい概念や歴史的な経緯などについては「ACSという概念がもたらしたもの」(167ページ)を参照してください。
構成としては,現場の流れに沿って考えていただくため,仮想症例を提示し,NSTE-ACSの①診断,②リスク層別化に焦点を絞って進めていきます。なお,この内容は欧米における救急外来でのNSTE-ACS診療のスタンダードを示すものですが,集中治療室でも十分に応用が可能であると思われます。また,我が国での診療とはだいぶコンセプトが異なる部分もありますが,米国ではエビデンスの吟味を重視し,コストの問題もあるため,2012年春の段階では実際にこうした流れでNSTE-ACSの診療が広く行われています。
読者のなかには「ACSの患者またはACSが疑わしい患者は即座に侵襲的冠動脈造影検査(心カテーテル検査)で診断し,治療する」と何となく考えている方いませんか?いや,日本ではこのように考えている医師のほうがむしろ多いかもしれません(循環器科専門医も含め)。今ここでハッキリ言いましょう。
「その考え方では不十分です」
本稿では,読者の皆さんに「①検査前診断の確からしさpre-test probabilityと②リスク層別化risk stratificationに基づいて,心カテーテル検査の適応を決定する」という世界標準の考え方を理解し,さらに日本の臨床現場で実践していただくことを目標にしています。
Copyright © 2013, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.