特集 Critical Care Nephrology
1.はじめに—急性腎障害と腎代替療法のこれから
土井 研人
1
Kent DOI
1
1東京大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学
pp.349-350
発行日 2023年7月1日
Published Date 2023/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102201092
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急性腎障害acute kidney injury(AKI)は幅広い疾患スペクトラムを有する症候群であり,血清クレアチニン値上昇と尿量減少に基づいて診断される。AKIの原因となる病態はさまざまであるが,高頻度に発生する臓器障害であること,AKI発症と重症度は予後と有意に関連することが,数多くの疫学研究により明らかとされている。特に敗血症,心臓手術などの侵襲の大きな手術後,心不全急性増悪は重症AKIをきたすことが多く,これらの病態予後改善のためには,AKIは克服すべき臓器障害であると広く認識されるに至った。
歴史を振り返ると,急激な腎機能低下を呈する病態は1900年頃から文献上記載されており,第二次世界大戦時には,四肢の挫滅・圧迫から救出された傷病者が,その後に急激な経過で腎不全を呈して死亡することを英国のBywatersらが詳細に報告し,急性腎障害のマイルストーン論文として広く知られている1)。そこから半世紀が経ち,2005年頃より急性腎障害acute kidney injury(AKI)という新たな呼称・概念が確立し使用されるようになった2)。その原動力は,腎臓医nephrologistのみならず,集中治療医intensivistがこの病態を重要視するようになったことであろう。敗血症や多臓器不全といった全身性疾患のなかでとらえられること,腎臓医以外が初期診療にあたること,が新たに言い換えられたAKIの特徴である。
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