連載
え? 知らないの?心臓外科手術の術野デバイス 前編(送血カニューレについて)
後藤 武
1
,
森實 雅司
2
1弘前大学医学部附属病院 臨床工学部
2済生会横浜市東部病院 臨床工学部
pp.374-380
発行日 2021年4月1日
Published Date 2021/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200869
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
心臓手術のなかでも,弁膜症などの開心術や大血管手術の際には,人工心肺を用いた体外循環が不可欠である。送血カニューレは心臓を停止させて,心内修復を行っている間の循環確保や血管内の循環血液量を確保するための動脈への送血路として,主に上行大動脈に留置される。体外循環を開始し,心内・肺血流を遮断する完全体外循環が確立し,大動脈遮断,冠動脈への心停止液注入による心停止を得て,心内修復術がはじまる。心内修復を終えると大動脈遮断解除,心拍動再開,心腔内に再び血流が再開し,心腔内を血液が満たして拍動再開し,部分体外循環となる。自己心による循環が維持され体外循環を終了し,プロタミンによるヘパリン中和後に止血を得て送血カニューレは抜去される。
2017年の日本体外循環技術医学会 安全対策委員会報告では,カニューレに起因するインシデントまたはアクシデントの発生があると答えた施設は全体の15.1%(445施設中66施設)であった。また2年間の人工心肺症例数86483件のうち,一過性であるが高度な障害レベルである3b以上は12件であった1)。心臓手術を受ける患者の高齢化に伴い,いまも一定の確率でインシデントは発生していると考えられる。今回は,送血カニューレに起因する合併症の軽減を目的として,先行研究などをふまえて解説する。
Copyright © 2021, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.