特集 中毒
Part 1 中毒の集中治療に必要な薬理学的知識
【コラム】LD50は時代遅れの指標?
髙橋 祐次
1
Yuhji TAQUAHASHI
1
1国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部
pp.530-534
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200410
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化学物質を生体に投与したときに現れる有害作用と,有害作用を引き起こす量を検出するのが毒性試験である。毒性発現によるリスクは,その物質が有するハザード(メモ)と曝露量によって決定される(リスク=ハザード×曝露量)。Paracelsusの言葉「すべてのものは毒である。用量が毒か薬かを決める」が毒性学を語るうえで必ず引用されるように「用量反応関係」は毒性学の基本原理である。本コラムでは,半数致死量lethal dose,50%(LD50)の求め方とその問題点,科学的根拠がないとされるにもかかわらずいまだに使用されているのかについて解説する。
Summary
●半数致死量lethal dose,50%(LD50)は主に齧歯類を用いた急性毒性試験によって求められる値である。
●一般化学物質のLD50は,毒物・劇物などを化学物質の危険度に応じて取り扱い方法の区別をするための「分類と表示」に使用されている。
●毒物・劇物は一般化学物質を対象とした「毒物及び劇物取締法」により規定され,毒薬・劇薬は「医薬品医療機器等法」において規定される医薬品であり,判定基準も異なる。
●LD50はヒトへの外挿性を考慮した「安全性の指標」ではない。ヒトの急性毒性の安全性の指標として急性参照用量acute reference dose(ARfD)がある。
●ヒトの中毒の際にはヒトの症例報告を参照すべきであり,RTECS,HSDB,MEDITEXTなどのデータベースは有用と思われる。
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