特集 分娩時の出血
出血と妊産婦死亡
唯 正一
1
1唯産婦人科
pp.10-17
発行日 1972年5月1日
Published Date 1972/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204362
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
細分専門化する医療の流れのなかで,私ども臨床にたずさわるものは,ともすれば疫学的データーである統計には無関心であったり,頭から信頼できないと決めてかかって軽視したりする傾向がみられます。産科領域では妊産婦死亡率,周産期死亡率が医療の質の判定のための重要な指標であることはご承知の通りです。しかしこの妊産婦死亡統計が何を意味するのか正しく理解していない産科関係者も決して少なくないようにみえます。私どもは昭和38年来の大阪府における妊産婦死亡調査を行なってきましたが,この間妊産婦死亡統計のもつ多くの問題に遭遇してきました。統計はその不正確さをもふくめて正しく理解することが大切です。その意味で今回はまず妊産婦死亡統計を考える上の初歩的事項にふれ,次いで大阪府の調査結果に加えて,世界各国とくに英国の出血死亡を眺めつつ,主題である分娩時出血を妊産婦死亡の立場から考えてみたいと思います。
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.