特集 内分泌・代謝・電解質
3.低ナトリウム血症—診断と治療のエビデンス
植西 憲達
1
Norimichi UENISHI
1
1藤田保健衛生大学 救急総合内科
pp.477-492
発行日 2015年7月1日
Published Date 2015/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200184
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本稿では,まず欧州ガイドラインで述べられている臨床的に重要な記述を紹介し,その後,低ナトリウム(Na)血症の診断と治療について,臨床上よく遭遇する重要な質問について回答していくことにする。
なお,本稿では低Na血症の病態生理や診断,治療の基本的な事項については字数の都合上省略している。初学者の方は,まず成書で低Na血症に関する項目に目を通してから,本稿を読んでいただきたい。
Summary
●脳浮腫の症状がある低Na血症は,診断よりも血清Naの補正を優先する。
●低Na血症の原因診断は,尿浸透圧,尿中Na濃度,臨床所見による細胞外液量の推定を用いて行うが,これらの指標を過信してはいけない。臨床経過に合わないのであれば,病歴を詳細に確認しなおし,病態生理学的に考えて正しい診断を探りなおす。
●低Na血症の治療は,脳浮腫を改善させるために必要な血清Na濃度の補正の目標と,浸透圧性脱髄症候群を予防するために必要な補正の限度を考えて行う。
●脱水,溶質摂取不足,心因性多飲,SIADの原因薬物の中止,副腎不全や甲状腺機能低下の治療開始後は,血清Naの過剰補正が起こるリスクが高い。また,治療中に急に尿量が増加した場合は過剰補正が起こり得ることを警戒する。
●浸透圧性脱髄症候群が起こったとしても,たとえ急性期が重症でも回復はまれではない。血清Na濃度を再び下げる治療が有効かもしれない。
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