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extracorporeal membrane oxygenation (ECMO)は,重症呼吸不全患者または重症心不全患者(時に心停止状態の蘇生手段として)に対して行われる生命維持法である。前者はrespiratory ECMO,後者はcardiac ECMO〔蘇生手段として用いられる場合は,extracorporeal cardio-pulmonary resuscitation(ECPR)〕と呼ばれている。
呼吸不全に対するECMOの第1例は,1972年にHillら1)によって報告された。しかし,1990年代後半に至るまでその有用性を証明することはできなかった。その後,機材の進歩と管理法の確立に伴って,徐々に有効性を示す報告が散見されるようになった。特に2009年に発表されたCESAR研究2)は,初めてECMOの有効性を証明したrandomized control trial (RCT)である。
一方,我が国のECMO成績は,2009年のH1N1インフルエンザパンデミック時の生存退院率が36%であり,欧米諸国の成績よりはるかに劣っていた3)。その理由として,ECMOに精通している医師・コメディカルスタッフが不足している点,機材が海外で一般的に使用されているものよりも劣っている点,患者の集約化が行われていない点が挙げられている。
我が国のECMOの発展過程は海外と大きく異なっている。ミシガン大学ECMOプログラム,レスター大学グレンフィールド病院,カロリンスカ大学病院ECMOセンターなど優秀なECMOセンターは,新生児・小児の呼吸・循環不全に対するECMOを起源として発展してきている。一方我が国では,救命救急センターを中心に院外心停止に対するECPRから発展してきている。ECPRでは,導入までの「時間」が予後に相関するため「より多くの施設で」「より素早く」という条件が優先され「トラブルに対応できる」「長期に安定的に管理できる」は二の次になっていると想像できる。しかし,特にrespiratory ECMOとなると超緊急的に導入が必要となることは多くなく「トラブルに対応できる」「長期に安定的に管理できる」ことがより重要である。そのような理由で,ECPRの感覚でrespiratory ECMOを導入することだけは,慎まなければならない。
このコラムでは,respiratory ECMOを行うべき施設について論じる。以下ECMOは主にrespiratory ECMOを示すことを了解いただきたい。
Summary
●ECMO患者を管理するには「ECMOの知識・技術」「経済力」「チームワークおよび交渉能力」が要求される。
●なかでも「チームワークおよび交渉能力」が重要であり,安全・確実にECMO管理を継続していくには,外科医などの他科だけでなく,あらゆる部門との連携が不可欠である。
●必要な知識・技術を維持し,経済的にも健全にECMOセンターを運営するには,患者の集約化が必要である。
●集約化するうえで,患者の搬送システムとECMOセンターと非ECMOセンターが効率的に連携するためのネットワーク構築がこれからの課題である。
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