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心停止からの自己心拍再開return of spontaneous circulation(ROSC)後の病態は,①心停止後脳障害,②心停止後心筋障害,③全身性虚血再灌流障害,④心停止に至った原疾患の残存と増悪,の4つに大きく分けられるが,近年は心停止後症候群post cardiac arrest syndrome(PCAS)と総称されるようになってきた1)。このうち,特に虚血再灌流障害によって血管内皮細胞の活性化と全身性の炎症が惹起され,高サイトカイン血症を呈すると考えられている*1。Adrieら2)は,炎症性サイトカインの放出という点が敗血症の病態に類似しているとし,“sepsis-like syndrome”という概念を提唱した。この概念が提唱された背景には,敗血症に準じた管理を行うことで,ROSC後の患者に臨床的なメリットをもたらすのではないかという期待があったことが推測される。しかし,その後10年以上が過ぎた現在では,sepsis-like syndromeという用語そのものを文献などで目にする機会が減った印象を受ける。
今回のコラムでは,PCASを“sepsis-like syndrome”とする概念は理にかなっているのかを探ることを目的とするが,できるだけ臨床的な視点で文献的考察を交えて述べようと思う。
Summary
●自己心拍再開(ROSC)後は,虚血再灌流障害により全身の炎症が惹起され,敗血症に類似した高サイトカイン血症を呈することから,sepsis-like syndromeという概念が生まれた。
●sepsis-like syndromeは,高サイトカイン血症を呈するだけでなく,血行動態など臨床的にも敗血症と似た印象を受けることがある。
●ROSC後の虚血再灌流障害が主体となるPCASと,重症感染症である敗血症では根本的な原因や病態が異なるため,“sepsis-like”という言葉の使用はかえって誤解を生む可能性がある。
●ROSC後の患者に対して,敗血症を意識した管理が試みられてきたが,現状では有用性が証明されたものはない。
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