特集 End-of-life
【コラム】拝啓 これからの日本の医療を担う医師の皆様へ―正義も人権もベッドサイドにのみある
伊藤 雅之
1
ITO, Masayuki
1
1高岡みなみ病院 外科
pp.130-132
発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100393
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■「パーフェクト」はあり得ない,「謙虚さ」と「他者への配慮を」
20年ほど前,私は富山県内のある公的病院に外科医師として赴任しました。私が赴任する直前に,早期胃癌の手術を受けた60歳の男性患者Aさんがいました。彼の実妹が同院の内科病棟のB看護師長でした。そして主治医は,執刀医でもあるC外科医師でした。私は担当外でしたが,日替わりで医師スタッフが振り当てられる病棟回診当番で,Aさんの診察にかかわることになりました。
初めての病棟回診でAさんは術後5日目を迎えていました。術後の経過は良好で,腹腔ドレーンも抜去されたばかりでした。ところが,術後7日目から38℃以上の熱発が続き,その後Aさんは腹痛を訴えるようになったのです。C医師は抗菌薬の投与以外には特別な処置を講ずることなく,10日目には腹腔ドレーン痕から黄色調の膿汁が排泄されるようになり,痛みは漸減しました。しかしその2日後にはドレーン痕から大量の出血が認められるようになり,止血のために緊急手術が施行されました。
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