発行日 1948年3月15日
Published Date 1948/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906296
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私達はバイ菌と聞くと,すぐコレラ菌チブス菌,或は結核菌,ベスト菌,破傷風菌など恐しいバイ菌が頭に浮びます。また實際,人類は永い間,これ等の恐しい病氣と闘つて來たのです。それで,その原因であるバイ菌を發見することに隨分努力して來ました。現在でも矢張種々の惡い病氣を起すバイ菌やバイ菌よりも更に發見しにくい濾過性病原體(ビールス)等の研究に對して,多くの學者達が熱心に研究して居ることも,皆さんがよく御承知の通りです。
種々の傅染病がバイ菌で起るであろうと云ふ考へは,今から80年前にフランスの化學者パストョール(Pasteur)先生が腐敗や醗酵現象の研究から出發して考へつかれたのです。次でドイツの細菌學者のコッホ(Koch)先生やその御弟子達,更にその後の多くの學者が研究もし又證明もして,現在のように多數の傳染病の病原菌が知られるようになつた譯です。然し皆さん,バイ菌は凡て傳染病の原因になるように私達の敵でしようか。この地球上にあるバイ菌の種類は實に無數です。私達に化膿や病氣や更に生命も奪ふような恐しいことをするバイ菌は,然し地球上に存在する無數のバイ菌の數に較べれば非常に僅かな數なのです。これと反對に私達に利益を與へるバイ菌も相當多敷に居るのです。唯私達がそれをよく認識して居ないからです。
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