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■症例
65歳の女性。身長150cm,体重90kg。変形性股関節症のため,両側人工股関節置換術が予定された。既往疾患に高血圧,糖尿病,急性心筋梗塞により経皮的冠動脈インターベンション歴あり。術前はアスピリンを内服継続。喫煙歴は20歳から40本/日で手術数日前から禁煙。
病棟から左肘に24Gの静脈路が確保され,手術室に入室した。単回の大腿神経ブロックを実施。プロポフォール,レミフェンタニル,ロクロニウムで全身麻酔を導入した。導入後に手背に20Gで静脈路確保。維持はセボフルラン1.2%,レミフェンタニル0.2μg/kg/min程度で管理した。手術時間は2時間半で,術中フェンタニルを合計300μg投与した。
術後鎮痛として,ディスポーザブルタイプのシュアーフューザー®Aによる経静脈的患者自己調節鎮痛(IV-PCA)を準備した。手背に確保した静脈路は手首の角度により滴下が不安定であったため,肘の静脈路にIV-PCAを接続した。フェンタニルを濃度10μg/mLに希釈し,手術終了前に流量3mL/hrでIV-PCAを開始した。ボーラス投与量は30μg,ロックアウト時間は10分とした。手術終了時のフェンタニル効果部位濃度は1.5ng/mLであった。スガマデクス投与後,呼気中のセボフルラン濃度が0.2%程度になった頃,覚醒したため抜管した。安定した自発呼吸数が8回/minあることを確認して,一般病棟に帰室させた。
■術後経過
帰室して2時間後,担当看護師が訪室したところ,患者は疼痛を訴えた。そこで,麻酔科医の術後指示に従い,IV-PCAの持続投与流量を4mL/hrに増やし,患者自身にPCAボタンを1回押してもらった。その夜,看視モニターのアラームが鳴った。夜勤看護師が訪室し,モニターを確認すると経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)が80%台に低下していた。患者は明らかに傾眠状態で意識レベルの低下があり,看護師はrapid response system(RRS)を起動した。数分後,ICU当直医が病室に到着したときのバイタルサインはGlasgow coma scale(GCS) E2V4M4,血圧(BP)85/40mmHg,心拍数(HR)55bpm,呼吸数4回/min,SpO2 85%(酸素4L/min)であった。
さて,ICU当直医のあなたならどうする?
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