症例ライブラリー 腕神経叢ブロックがうまくいかない
鎖骨上腕神経叢ブロックがうまくいかない
汲田 翔
1
Sho KUMITA
1
1五輪橋整形外科病院 麻酔科
キーワード:
気胸
,
横隔神経麻痺
,
selective trunk block
,
SeTB
Keyword:
気胸
,
横隔神経麻痺
,
selective trunk block
,
SeTB
pp.324-328
発行日 2024年4月1日
Published Date 2024/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202876
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■症例
38歳の男性。身長170cm,体重95kg。外傷性右上腕骨骨幹部骨折に対してロッキングプレートを用いた観血的固定術が予定された。
既往歴および手術歴はなし。胸部単純X線写真では軽度の両側横隔膜挙上を認めた。採血データ,心電図検査および呼吸機能検査は正常範囲であった。
■症例経過
入室時の経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)98%(室内気)。全身麻酔導入前に超音波ガイド下鎖骨上腕神経叢ブロックを施行した。患者は仰臥位で,鎖骨上窩で鎖骨と平行にリニアプローブを当てたが,肥満のためいつもよりプローブを操作するスペースがないように感じた。超音波画面で鎖骨下動脈外側に腕神経叢を認めたが,描出がうまくできないと感じた。プローブ外側からブロック針を穿刺したが,針を操作するスペースがなく運針に苦労した。針先を描出できず,針の刺入位置を変えながら合計4回穿刺した。局所麻酔薬は0.5%レボブピバカインを合計20mL投与した。ブロック手技終了後,全身麻酔を導入し気管挿管を実施した。
手術は定型どおりで手術時間は130分だった。抜管後に患者は不穏となり,創部痛を訴えたためフェンタニル合計100μgとアセトアミノフェン1000mgの静脈内投与を行った。この時点で疼痛は自制内となり,病棟に帰室した。100%酸素4L/min投与下でSpO2は98%,そのほかの退室時バイタルサインは安定していた。
患者は安静時の創部痛に加えて夜間から呼吸が苦しい気がすると訴え,翌朝まで酸素投与を継続されていた。朝になっても呼吸苦が改善せず,胸部単純X線を撮像したところ,右肺の気胸を認めた…。
さて,どうすればこの症例をうまく管理できたのだろうか。
Copyright © 2024, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.