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■症例
6歳の男児。身長100cm,体重15kg。鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術が予定された。半年前に先天性腎低形成に対し,生体腎移植手術を受けており,そのときの全身麻酔経過に問題はなかった。常用薬は免疫抑制薬。そのほかの既往歴はなし。薬物・食物アレルギーは指摘なし。
手術前日の術前診察にて,母親から10日前まで感冒症状があったと申告があった。診察時,透明鼻汁は残っているものの,発熱や咳嗽などの症状はなかった。2週間以内の上気道炎罹患歴が気にかかったが,本人の全身状態は良好であり,また遠方からの来院で手術日程の再調整も難しいこともあり,予定どおり手術実施の方針とした。
■麻酔経過1
手術室入室時,母親と離れた後から激しく泣いていた。経皮的末梢動脈血酸素飽和度(SpO2)は100%であった。セボフルラン8%と酸素,亜酸化窒素を使用した緩徐導入で麻酔導入を行った。左前腕に末梢静脈路を確保後,ロクロニウム10mg,フェンタニル50μgに加え,気道分泌物が多かったためアトロピン0.15mg(0.01mg/kg)を投与した。筋弛緩薬の効果発現後,内径5.0mmカフ付きチューブで気管挿管した。その後気管内吸引を行うと,透明の分泌物が中等量吸引された。聴診で換気は良好,呼吸器設定は圧規定換気(PCV)で換気圧10cmH2O,呼気終末陽圧(PEEP)5cmH2O,呼吸数20回/minとし,最高気道内圧15cmH2Oで1回換気量150mL程度だった。麻酔維持はプロポフォール(30mg投与した後12mg/kg/hrで開始し,ステップダウン投与法で脳波モニタリングの波形を参考に調整)とレミフェンタニル0.2μg/kg/minで行った。
手術開始直後,吸入酸素濃度(FIO2)0.4でSpO2が99%から90%に低下した。カプノグラム波形が右肩上がりの閉塞性パターンを示していることに気づいた。呼吸器設定は,最高気道内圧15cmH2Oで1回換気量が40mLに減少していた。血圧や心拍数は正常範囲内。覆布で全身の観察はできなかったが,観察できる範囲で皮膚の異常はなかった。
さて,あなたならどうする?
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