徹底分析シリーズ 身近なのに距離がある医療機器
手術前後のCHDF管理—治療開始基準と適切な管理方法を知る
吉本 広平
1
,
土井 研人
2
Kohei YOSHIMOTO
1
,
Kent DOI
2
1東京大学医学部附属病院 救急・集中治療科
2東京大学医学部附属病院 救命救急センター
pp.1320-1324
発行日 2023年12月1日
Published Date 2023/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202770
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こんなときどうする?
慢性腎臓病(CKD)と陳旧性心筋梗塞による慢性心不全がある60代男性の緊急手術依頼だ。交通外傷による腹部臓器損傷に対して2日前に緊急止血術が施行され,人工呼吸器下でICU管理となっていた。本日,腹腔内から再出血の疑いがあり,再開腹止血術が必要とのこと。大量輸液と腹部膨満の影響で肺コンプライアンスはきわめて不良,吸気圧はプラトー圧で約30cmH2Oを要している。入院以降,乏尿性腎不全が持続しているが,凝固障害と不安定な循環動態のため,まだ透析は行われていない。直近の動脈血液ガス分析では,換気不良に伴う二酸化炭素(CO2)貯留に加えてアニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスを認める。救命のため麻酔依頼は受けざるを得ない状況だが…。
…
きわめて重篤な症例であり,術後に緊急透析が迫っていることは明白である。救命に向かって綱渡りの症例であり,遅滞のない,しかし拙速でもない透析治療が必須である。しかし透析治療開始の適切なタイミングは,どの状態を根拠にするか,どのデータを閾値にするか,意外に難しい。
本稿では,まず持続的血液濾過透析(CHDF)の基本原理や回路構成について説明し,透析治療が適応となる病態と選択すべき透析治療のモダリティ(なぜCHDFなのか),CHDFの開始基準と透析処方について,これまでの研究を紹介しながら概説する。また各論として,抗凝固療法およびバスキュラーアクセスについても説明する。
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