巻頭言

私自身は本徹底分析シリーズのテーマである系統的レビュー・メタ解析やビッグデータ解析をやったことがない。前向きの臨床研究は多く実施し，論文も書いてきたが，これらの論文を書く際，いくら客観視しようとしても自分の結果を支持する文献をついつい引きがちである。そうして導いた結論が，世の中的に妥当なのか確信がもてないまま投稿することもあったと思う。

　冷静にこれまでの自分の臨床研究論文を振り返り，「一般的にはどうなんだろう？」と知りたくなったとき，本特集で紹介する後ろ向き研究が有効であることがわかる（本来は各論稿で述べられているように，後ろ向き研究を行って，あたりをつけてから前向き研究を行うのが絶対におススメです！）。

　ということで，私のようにあまり予備知識がない麻酔科医に向けて，その道の専門家が優しく導いてくれたら嬉しいな，という個人的な欲望から生まれたのが本企画である。専門医取得前後で，後進の臨床指導をする際にエビデンスにもとづきたいので臨床研究論文を読みたい，もしくは自ら臨床研究をしてみたい麻酔科医がターゲットである。私自身がこうした“お作法”に明るくないため，読者（特に，これから臨床研究を志す麻酔科医）と同じ目線で読めるよう執筆陣とのキャッチボールを行い，誰も置いてけぼりにしない企画にできたと思う。特に若手麻酔科医の，明日への糧にしてもらえると嬉しい。