快人快説
心不全パンデミック—心不全はcommon disease
佐藤 直樹
1
Naoki SATO
1
1かわぐち心臓呼吸器病院 循環器内科
pp.587-593
発行日 2019年6月1日
Published Date 2019/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201405
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はじめに
心不全患者は年々増加しており,日本循環器学会の循環器疾患診療実態調査報告によると循環器関連施設に入院した心不全患者数は2018年で28万人,そのうち,急性心不全で入院する患者は12万人を超えている1)。心不全を中心とした心血管疾患による死亡は,癌に続く死因の第2位に位置している2)。癌と同様に国民を脅かす疾患群として脳卒中と心血管疾患が注目され,国レベルの対策で対応していく必要性が認識され,2018年12月に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が公布された3)。このような背景には超高齢社会が少なからず関与しており,“心不全パンデミック”と称されるほどの事態に至ったのである。心臓を構成している冠動脈,心筋,弁,心膜,そして刺激伝導系のいずれが障害されても,心不全は起こり得るので,今後ますます心不全患者に遭遇する機会は増える。common diseaseとして医療に携わるすべての人が,その診断および治療法の要点を共通認識として知っておくべきである。この参考になるのが,2018年3月に公表された新しい心不全ガイドライン『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)』4)(以下,ガイドライン)である。本稿はそれにもとづいて解説する。
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