徹底分析シリーズ アナフィラキシー
巻頭言
齋藤 繁
1
1群馬大学大学院医学系研究科 麻酔神経科学
pp.925
発行日 2016年10月1日
Published Date 2016/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200675
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- 文献概要
麻酔薬やデバイスの進歩によって,手術中に患者が生命の危険にさらされる場面は非常に少なくなってきた。重篤なアナフィラキシーは命にかかわる場合があるうえ,発症を予測することは困難である。麻酔科医が手術中に肝を冷やす数少ない病態といえるかもしれない。日本麻酔科学会の偶発症例調査で,術中発症の危機的偶発症のうち,約3割がアナフィラキシーであることが報告された。適切な治療を行えば重大な結果をまねくことは少ないが,念頭に置いている麻酔科医が少なく,発見が遅れたり,十分な治療が行えなかったりする場合もある。その対策として,日本麻酔科学会はアナフィラキシーへの対応ガイドラインを作成中である。
LiSA誌でもアナフィラキシーは時折取り上げられてきたが,本格的な特集が組まれるのは20年ぶりである。その間に,麻酔科医が使用する薬は大きく変化し,診断法にも進歩がみられた。本徹底分析では,網羅的な知識を得ることができるよう,発症メカニズム,発生頻度,診断,治療にフォーカスした。また,新しい診断方法として,好塩基球活性化試験や,特殊な病態として妊婦のアナフィラキシーやKounis症候群についても盛り込んだ。読者が術中にアナフィラキシーに遭遇したとき,自信をもって対応できるようになることを期待している。
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