徹底分析シリーズ 麻酔科医として歩み始めたあなたへ—10年後の自分に向かって,今日から始めたいこと
社会から選ばれる麻酔科医になるには—サブスペシャルティの重要性
竹内 護
1
Mamoru TAKEUCHI
1
1自治医科大学 麻酔科学・集中治療医学講座
pp.324-327
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200539
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●麻酔科医の知名度
今から約30年前の冬,卒業を間近に控えた私は田舎の母に麻酔科に入局することを伝えた。その瞬間から母は約3時間泣き続けた。「あなたは学生時代に勉強しなかったから,麻酔科にしか入れなかったのではないか?」と。いつもは親に対して反抗的な言動の多い私であったが,このときばかりは一言も反論できなかった。なぜなら,学生時代は麻雀とパチンコに明け暮れ,成績も最下位に近かったからである。正直に言えば,私も内科に進みたかったのだが,このままでは落ちこぼれるという確信もあった。せめて2年間で気道管理に習熟してから内科に転科しようと考えていたのだが,麻酔科を始めてみると面白過ぎて,30年以上が経過してしまった。
この時代には診療科としての麻酔科の知名度は,まだ一般の人にはかなり低かった。母に限らず田舎の年配者には,医師といえば内科,外科,整形外科,産婦人科,小児科などが代表だった。10年が経過し,私が麻酔科指導医になってからも,看護学生から「麻酔科の先生はどういう学校を出られたのでしょうか?」という質問も受けたし,医学生でさえ麻酔科の存在を知らない者もいた。
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