徹底分析シリーズ 小児の気道異常
小児麻酔における気道管理研究—現状と将来の展望
磯野 史朗
1
,
本山 悦朗
2
Shiroh ISONO
1
,
MOTOYAMA, K. Etsuro
2
1千葉大学大学院医学研究院 麻酔科学
2Emeritus University of Pittsburgh School of Medicine and Children's Hospital of Pittsburgh of UPMC
pp.692-704
発行日 2015年7月1日
Published Date 2015/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200327
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はじめに
臨床研究とは,臨床での問題点を明らかにし,その問題解決を目指すものである。小児麻酔の気道研究において,臨床ではどのような問題に直面し,解決が求められているのだろうか?最近の米国での大規模疫学調査1)では,小児麻酔症例において麻酔が原因の心停止は10000症例に0.6件の頻度で発生し,その67%は気道管理に関連し,死亡率は29%であると報告されている。臨床医にとって,小児気道研究が重要なテーマであることに間違いはないようである。
本稿は,将来の麻酔科学領域を牽引すべき若い麻酔科医が臨床研究に興味をもち,臨床研究のテーマは日常臨床のなかにたくさん存在することを認識してもらうために,症例に沿って麻酔管理の流れを示し,そこに付随する未解決の問題点について議論するスタイルとした。まず,磯野が重要と考えるテーマについて述べた。磯野は,上気道生理学と成人での周術期気道管理を主な研究テーマとする麻酔科医である。小児麻酔の経験はあるが小児麻酔専門家ではない磯野の私見に対して,ピッツバーグ大学小児麻酔科の本山悦朗名誉教授がコメントされている。読者は,両者の意見の共通点や相違点なども注意深く読んでいただきたい。
なお,読者の理解を促すために,本山氏の英文に対して磯野が日本語での見出しを付け,適宜,英単語(*を付す)の訳語を添えた。それに伴い,改行を加えた箇所もある。
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