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◆友人から「バレエの発表会に出るので見に来て!」という連絡をもらい,行ってきました。数十年前のこぢんまりとした自分のピアノ発表会体験しかない私は,その本格的なセッティングに,ややカルチャーショックを受けました。
会場は区民ホールの大ホール(約1500人収容)。1階席は観客でいっぱいです(2階の様子は不明)。さすがに生オーケストラはありませんでしたが,最後方には,音響装置と撮影器材もズラリと並びます。入場無料。なのに,提携バレエ団のダンサー男女5名を助っ人として招聘し,プロの踊りも見せてくれるというのです。
以前「発表会に出るには,かなりの額の“出演料”を支払うのだ」と彼女が言っていたことを思い出し,このような発表の場を整えるならばさもありなん,と納得しました。
◆しかし幕が上がるとやはりそこは“発表会”。まず「ベビークラス」の幼児数人がワラワラと登場し,音楽に合わせてバレエというよりも,お遊戯です。微笑ましさ満開です。次に,ちょっと大きくなったグループが出てきて,ちょっと進化したバレエ風お遊戯…と,子供の成長とバレエ技術の進化が具体的に示されます。一通りの顔見せが終わったら,それぞれのグループが入れ替わり立ち替わり,衣装を変えては登場する途中に,プロが“どうだ”と跳んだり回ったりする曲を差し挟んで,観客を魅了する構成で2時間以上,大いに楽しみました。
なかには,コンクールで入賞する腕前の者もおり,ソロパートを踊ります。しかし,出演料をもらう側と払う側の違いはわかりました。何が違うか。端的に言えば「ゆとり」です。プロは,練習のような余裕の雰囲気をまとって踊り,何回が盛り込まれる見せ場のときだけ,ピリッとした緊張感を走らせ,ビシッとワザを決めてくれます。一方のアマは,1曲の始めから終わりまで,自分のできる精一杯で踊ります。
ただ,この日のために練習を重ねたであろう少女らのその懸命な姿が一番印象的でした。
◆何かを発表したいという気持ちは,多くの人がもつ根源的な欲求のようです。でないと,出演料を支払って発表会に出る理由も,頼まれもしないのに,ブログを書いたり,動画や写真を投稿したりする理由も説明できません。
そしてこの発表欲求は,観客や読者や閲覧者といった,受け止める人の存在がなければ満たされません。たとえ「つぶやき」と称していたとしても,誰からも何の反応もなければ,いずれやめてしまうはず。多くの人がこの欲求を満たすために「発表する場」を求めているのだなと,練習成果を発表し終えた友人からの満足感に満ちたメールを読みながら思いました。
◆「発表の場」であるLiSAは,熟練麻酔科医の登場が多いですが,私の心を打った少女らのように,未来を創る若者の自由な「発表の場」にもなりたいと思います。LiSAは,さまざまな投稿を広く受け付けています。掲載の可否は編集会議で決まりますが,その編集会議は参加自由,こちらにもお運びください。
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