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◆ある週末の夜8時ころ,自宅の電話が鳴りました。NHKの電話世論調査というのです。ニュースなどで,「RDD方式に従って現在の政権を支持するかしないかを…」というアレです。以前から,実際のところどんなものなのだろうと興味があったので,「5~6分ほどお時間がかかります」というのに一瞬たじろぎましたが,お引き受けしました。 8月15日に特別番組を放送するにあたっての調査というだけあって,「集団的自衛権」に関する質問も並び,「う~ん」と悩みながらの回答で,電話を終えたときはグッタリ。どんな質問に対して,自分は何を選択したのか,残念ながらあまり覚えていません。日頃から,社会情勢については自分なりの考えを持っているつもりではありましたが,いざ「どっちですか?」と問われると,さほど考えがまとまっているわけでもなく,答えに窮するものですね。 ◆収穫は,ニュースや新聞で示される電話による調査結果には,選択バイアスがあると実感したこと。少なくとも,かなりの数の20代は(もしかしたら30代も),この調査には回答していないでしょう。固定電話にかかってくる(最近の若者は,自宅に固定電話はない)うえに,第1問に入る前に,回答者を「その家族の最年長者」と指定されたのです。ここで当該人物が「お断り」もしくは「不在」だったら,次の人に回答権が移るのか,調査がそこで終了なのかは不明ですが,親と同居する若者に第一回答権はありません。 間違いなく高齢側に偏った回答者集団による調査結果をベースに,「日本のこれから」を語ることにどれだけの意味があるのでしょう。だって,高齢になればなるほど「これからは」は短くなるのだから。そして,考えるべき「これから」は,もっとずっと先のはず。このような「難しい問題だから,年長者に任せておけ」と言わんばかりの対象選択による調査結果は,かなり限定的に解釈すべきでしょう。 ちなみに,回答者には20歳以上という条件もつきました。有権者年齢ということなのでしょうが,成人年齢引き下げも議論される昨今,せめて18歳以上にしてもよかったのでは。 ◆もう一つ,電話による対話形式であるがゆえのバイアスの可能性も。電話口の女性の言葉のイントネーションから,沖縄の方と推察いたしました。そして,「日本の外交は今後,どういう方向に進むべきだと思いますか? ①日米同盟をさらに強固なものにする,②アジア重視の路線に転換する,③…」という問いかけです。沖縄の方に向かって“日米同盟を強固”というのは,申し訳ないような,憚られる気持ちが生じました。回答は歪まないように心掛けましたが,この微妙なひっかかりも,多数が集まれば結果に影響するかもしれません。 ◆論文を読むときに「バイアスに注意しろ」と頻繁に言われ,誰しも“注意”はしているのでしょうが,実際に対象とならないと,見えないことも多そうです。
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