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◆久しぶりに唖然といたしました。市民を巻き込む自動車事故の原因と疑われ,「脱法」の名称がよくないとされた“いずれは違法ドラッグ”のことを「危険ドラッグ」と称することにするとの報道です。この名称,「ドラッグは安全なもの」という前提がないと成り立たないと思うのですが…。 名前をつけるのは,それが我が子だろうが,ペットだろうが,新しい概念だろうが,なかなか難しいこと。なので,この「危険ドラッグ」を決めるにあたっても,いろいろなご苦労があっただろうと,お察しいたします。ただプロポフォール事故があっただけに,「薬は基本的に危険なものですよ!」という指摘が,医療・薬事行政を担う官庁から入らなかったのはなぜ,と感じます。 ◆ただ,名称を改める際に否定的意見は出てくるものです。「認知症」のときもそうでした。過渡期には「私の原稿では,痴呆症のママで」と指示されることもありました。確かに,言葉の意味を考えれば,せめて「不」か「欠」を付けてはどうですか,とは思いましたが,それでも皆が使えば,最初の違和感は徐々に薄れ,その言葉から想起するものにズレも生じなくなり,意思疎通の役割は十分に果たします。 このような名称の変更には,アンテナを張るようにしています。用語を適切に選び,統一を図ることも,その出版物の品質を左右する大切な要素だからです。最近では,『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』で,大幅な改訂がなされたそうです。LiSAはDSM-5に関連する内容を取り扱うことが少ないので,「折をみて変更内容をチェックしよう」くらいに構えていられますが,精神科領域の出版物に携わる編集者は,どのタイミングからどの名称を使うか決めなければならないでしょうから,大変だと思います。 ◆用語選びといっても,専門用語は,専門家の方々が「コレ!」と決めて「用語集」としてまとめてくださるので,あまり悩むことはありません。ただ,たまに二つの学会で表記が異なっていたり,改訂版で変更されていたりして,気が抜けません。 編集者として悩ましいのは一般用語です。漢字にするか,かなにするか,いちいち悩んでいます。さらに難しいのがオノマトペ。LiSA 6月号は「産科出血」の前編でしたが,そこで,播種性血管内凝固(DIC)に陥った際の出血は「さらさら」か「サラサラ」か,だいぶ悩みました。そもそも,DIC状態の大量出血も,比較される普通の出血も見たことがないので,どちらが実際の状況にフィットする表記なのかわからないのです。結局,「さらさら」となりましたが,読者の感覚ではどちらが近いのでしょうか? ◆「さらさら」で思い出したのが「オレオレ」。かなり秀逸なネーミングだと評価しています。これも名称を改めるとのことでしたが,「母さん助けて」でも「おれおれ」でもなく,やっぱり「オレオレ」でしょう。
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