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◆年の始めに富士の夢をみると縁起がいいといいますので,縁起がいいかはわかりませんが,年頭に富士山ネタを一つ。
2013年の夏に,数年前から計画していた(←流行を追ってではないアピール)富士山登頂を果たしました。その帰路で,大変驚いたことに遭遇したのです。富士急行の河口湖駅から大月駅に出て,中央線に乗り換えて都内へというルートをとりましたが,富士急行の途中に「富士山」という駅があるのです。「鉄」と呼ばれるその筋の方々にとっては周知のことのようですが,私には「!」であり「?」でした。駅周囲を見渡しても,富士山の眺めが素晴らしいというわけでもなさそう…。なぜ,ここを「富士山」と?
◆ある日,この疑問に対する解答を示してくれそうな方と昼食をともにする機会に恵まれました。早速,尋ねます。
「富士急行の途中の何の変哲もないところに,“富士山”という駅があったのですが,あれは何ですか。富士山はもはや世界遺産なのです。日本のことを何も知らない外国の方が富士山を目指してやって来るのです。そのとき,間違ってあの駅を目的地としてしまい,あんな,何もない駅に降り立ってしまったら大変ですよ」
そもそも富士急行の関係者でもないのですから,このように言われても困るだけのはずですが,そんな些末なことには一顧だにせず,この方は私の発言に大変な誤りがあることを丁寧に指摘してくださいました。
「お言葉ですが,あの駅(←当然,行ったことがある)は“何もない駅”ではありません。現に,駅には駅員がいたでしょう。駅前にはバス停やタクシー乗り場もあります。本当の何もない駅というのは,使用済み切符を入れる箱がポツンと置いてあるだけで,その周囲に動く物などまったくいない駅のことです。次の戻りの列車(電車ではないかもしれないのですね)に万一乗り遅れたら,そのままそこで野宿〔その世界では駅寝(えきね)と呼ぶそうです〕するしかないような,そんな駅こそが,真の“何もない”駅なのです。そして日本全国には,そのような駅がたくさんあるのです。今度,ご案内しましょうか」
「駅寝」という新鮮な言葉の響きとともに,普段,「東京は日本の中で特異な存在なのだから,東京以外の病院事情や医療状況を常に意識しないと駄目だよ」などと知ったような口を編集部員にきいていた自分自身が,東京スケールで物事を見ていたことを痛感させられました。
◆以前,別の麻酔科医の方とお話していたときに,「北限の麻酔科医を探せ」という企画案で盛り上がったのですが,これは酒席の戯言で終わらせず,実際にやってみたほうがいいのかもしれません。少なくとも,真の何もない駅に降り立つよりは,日本国内の多様な医療需要と麻酔科医に求められていることなど,その振れ幅を知ることができそうです。
我こそは北限(もしくは南限)の麻酔科医だ!という方からのご連絡をお待ちしております。
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