徹底分析シリーズ ガスメディエータの未来
硫化水素(H2S)の臨床への応用―良薬は鼻にクサし
徳田 賢太郎
1
Kentaro TOKUDA
1
1九州大学病院 集中治療部・救命救急センター
pp.1290-1293
発行日 2012年12月1日
Published Date 2012/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101699
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「硫化水素(H2S)」といわれてピンとこない方は,温泉のにおいの主成分である「卵の腐ったようなにおいのガス」を思い出してほしい(コラム1)。日本では,5年ほど前にH2Sを用いた自殺が多発し,一般には「毒ガス」としての悪いイメージをもたれているようであるが,実はH2Sはわれわれの体内で常に産生されており,重要なシグナル伝達分子として,多彩な生理的・病態生理的な役割を担っている。
近年,内因性H2Sが細胞・臓器保護的に作用する,また,外因性に投与されたH2SないしH2S供与体(ドナー)*1が細胞・臓器保護効果を有する,という報告が相次いでいる。このためH2Sは,いくつかの病態・疾患における新たな治療戦略のターゲットとして注目されている1)。表12)に,H2Sが作用を発揮すると推定される標的分子をまとめた。
本稿では,これまでに報告されたH2Sの臓器保護効果と,その臨床応用の可能性について述べる。
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