徹底分析シリーズ 意識のバイオロジー
巻頭言
倉田 二郎
pp.347
発行日 2012年4月1日
Published Date 2012/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101499
- 販売していません
- 文献概要
なぜ麻酔で意識がなくなるのか。古くからあるこの問いは,今なお新しい。日々の臨床麻酔で,意識がないと確かめたにもかかわらず,術後に患者から術中覚醒をにおわせる言葉を聞いたとき,そして,集中治療室や救急外来で意識障害患者の「こころ」に思いをはせたとき,意識の謎は,新鮮な疑問としてわれわれに迫ってくる。
最近では,神経科学における意識研究の隆盛を追うように,麻酔科学においてもヒトの「意識消失」のメカニズムが論じられることが多くなった。分子・細胞・動物モデルで究められた「麻酔メカニズム」研究が,いよいよ最終局面に到達した感がある。同時に,術中覚醒をいかに防ぐかという課題にも改めて直面している。「意識レベル」の推定を試みる各種脳機能モニターが麻酔科医に広く普及したことで,その意義と有効性をより正確に知りたいと思う読者も多いであろう。
このような背景を鑑み,麻酔と中枢神経障害における「意識」を徹底分析した。意識の哲学と基本概念,「統合情報理論」をもとに意識の定量化を目指す最先端研究,意識を可視化する機能的脳画像法研究の原理と最新知見,意識と記憶を担う脳ネットワークへの麻酔薬作用,麻酔下脳波・誘発電位の基礎知識,そして最後に,意識障害の臨床と神経科学から導かれた独創的な「内意識」と「外意識」の理論。それぞれについて,各執筆者が平易かつ明快に解説している。
あなたを信頼して眠る患者の「こころ」に思いをいたしながら,「意識の科学」に挑戦してみませんか?
Copyright © 2012, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.