徹底分析シリーズ 麻酔に役立つ血糖のお話
―血糖調節のメカニズム―一律に目標血糖値を設定するのには限界がある
田辺 節
1
,
小田原 雅人
2
TANABE, Takashi
1
,
ODAWARA, Masato
2
1東京医科大学 分子糖尿病学講座(萬田記念講座)
2東京医科大学病院 糖尿病代謝内分泌内科
pp.1156-1160
発行日 2011年12月1日
Published Date 2011/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101394
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糖尿病患者が一生のうちに手術を受ける確率は約50%といわれており,糖尿病患者の術後合併症の頻度は高く,その死亡率も非糖尿病患者に比して高い。また,糖尿病患者は,高血圧,虚血性心疾患や肝・腎機能の障害を高頻度に合併している。これらの理由から,糖尿病患者の手術にあたっては,術前からの周到な準備と周術期における細やかな血糖管理が必要不可欠である。
厳格な血糖コントロールによる重症患者や手術患者の予後改善効果の報告1,2)がなされる一方で,その合併症として,低血糖が数多く生じており,80~110mg/dLを目標値とする厳格な血糖コントロールの効果自体に否定的な報告3,4)も散見される。これらの研究は,一律な目標血糖値を設定することの限界を示唆している。血糖コントロールは,個々の患者に応じて,血糖値の変動幅,医療環境,糖代謝障害の有無,周術期の栄養管理など,さまざまな要素を考慮しなければならない。
本稿では,血糖コントロールを安全に行うために理解しておくべき血糖調節にかかわる生体のメカニズムを解説する。
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