徹底分析シリーズ 麻酔科医とタンパク質の一生≪番外編≫
HMGB1:寝た子を起こすような…
名和 由布子
1
,
丸山 征郎
1
Yuko NAWA
1
,
Ikuro MARUYAMA
1
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 血管代謝病態解析学
pp.152-155
発行日 2010年2月1日
Published Date 2010/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100863
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われわれ生体にとっての侵襲には,感染症や外傷,手術侵襲などの外的なものと,虚血や悪性腫瘍,自己免疫疾患などの内的なものがある。いずれも局所化・終息化するか時間的空間的に拡大するかのベクトルを持ち,後者の制御がつかなければ,臨床上予後の悪い多臓器不全へと進行していく,と考えられる。1999年に,「核タンパクであるhigh mobility group box protein 1(HMGB 1)は敗血症後期における致死的メディエータである」という衝撃的な論文1)が世に出てから約10年が経過している。にわかに脚光をあびたこのタンパクはさまざまな分野や角度からの研究が続けられており,HMGB1は局所の病態が全身化・慢性化する際の介在因子(メディエータ)として,重要な役割を持つことがわかってきている。
本稿ではおもに,周術期管理に難渋する敗血症や急性肺障害(acute lung injury : ALI, acute respiratory distress syndrome : ARDS)・播種性血管内凝固症候群disseminated intravascular coagulation(DIC)という重篤な病態におけるHMGB1の生体内での動態について述べ,加えてHMGB1を治療標的とした今後の展望について触れる。
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