徹底分析シリーズ 区域麻酔のControversies
全身麻酔下に硬膜外穿刺を行ってよいか?
横山 正尚
1
Masataka YOKOYAMA
1
1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 麻酔・蘇生学分野
pp.196-200
発行日 2009年3月1日
Published Date 2009/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100600
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全身麻酔と硬膜外麻酔の併用が,スタンダードな麻酔法となってきた。全身麻酔の導入前に硬膜外穿刺を実施し,カテーテルを挿入するのが一般的である。全身麻酔下での硬膜外穿刺やカテーテル挿入では,“神経損傷をきたす可能性のサイン”といわれる疼痛や異常感覚がわからないので合併症のリスクが高くなる,との認識からである。ところが,イギリスでは全身麻酔後に硬膜外穿刺を実施することが多い,と聞く。きわめてまれな合併症よりは患者のストレスを軽減するほうのメリットが大きいと考えるからであろうか。
確かに患者の負担は減り,麻酔科医もストレスが少なく,体位もとりやすく,手技もスムーズになるかもしれない。著者も何回か硬膜外麻酔を受けたが,見えない背中での注射は怖い。怖くて痛ければますます体は硬くなり体位はとれない。そうすると麻酔科医にしっかり体位をとるようにとしかられる。看護師には抑えられる。患者にとってはただでさえストレスの強い全身麻酔の前に,痛くてつらい思いをすることになる。
小児では当然,全身麻酔下での硬膜外麻酔が一般的に施行されている。小児では安全性が高いのであろうか。そもそも,全身麻酔下での硬膜外穿刺は危険であるとのエビデンスがあるのか。その頻度はどれほどか。もう一度,硬膜外麻酔の合併症に関する報告を読み返してみて,全身麻酔下での硬膜外穿刺に関しての是非を考えてみたい。
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