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症例
52歳の男性,身長165cm,体重100kg。既往歴:高血圧。舌癌治療のため外頸動脈からシスプラチンの動脈内注入を受けた。3日後から,舌,頸部の腫脹が認められ,呼吸が困難となってきた。冷や汗,頻呼吸(喘鳴有)50%酸素マスクにてSpO285%,心拍数110bpmであった。頸部は腫脹が強く甲状軟骨等を触診できない。内視鏡では腫脹して水泡形成し,ほとんど形をなしていない喉頭蓋と声帯が確認されている。坐位では患者は何とか呼吸苦を我慢できるが,呼吸苦が強いため仰臥位をとることができない。
耳鼻科の医師から緊急の気管切開の依頼を受けた。
経過:手術室で100%酸素マスクで呼吸をさせたが,呼吸苦の状況はあまり変化なく坐位しかとれなかった。耳鼻科医が局所麻酔で気管切開を施行しようとしたが,呼吸苦がさらに強くなり,患者が不穏となり暴れたためプロポフォールとベクロニウムを投与してしまった。マスクで換気を維持しようとしたが,うまく換気ができず胸郭が上がらない。SpO2は75%まで下がってきている。心拍数は120bpmであった。
経過:最初に喉頭鏡を用いて挿管を試みたが喉頭蓋や声門などの構築物の確認ができなかった。ILMAを用いて気道確保を行おうとしたが,舌が高度に腫脹して硬化し,挿入ができなかった。SpO2は60%まで低下してきた。再度マスクで換気を行うも十分な換気が行えない。緊急気道確保に準ずる措置が考慮された。耳鼻科の医師に緊急気管切開を依頼した。SpO2は55%でさらに低下をしてきている。心拍数も70bpmまで下がってきた。
経過:気管切開が開始され,皮切がなされ,なんとか甲状軟骨を認識できた。SpO2は20%で心拍数は20bpmであった。まず酸素化を行う措置が考慮された。
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