徹底分析シリーズ 岐路に立つ産科医療:麻酔科医はいかにかかわるか
わが国の産科医療の現状と,その改善策について―小規模分娩方式から集約化,大規模施設化
海野 信也
1
Nobuya UNNO
1
1北里大学医学部 産婦人科学教室
pp.402-408
発行日 2007年5月1日
Published Date 2007/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100299
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わが国が今,医療提供体制の深刻な危機に直面していることは疑う余地がない。東京近郊の公的病院ですら医師不足に陥っている。ここ数年の間に,多くの勤務医が大病院の安定した常勤職を捨てて,小さな無床診療所を開業することを選んでいる。病院の勤務医は,医療安全対策や患者満足度の向上,日本医療機能評価機構の基準をクリアするために診療以外の管理業務に忙殺されている。患者は医療に利便性とごく短期的な満足を要求し,病院には24時間対応の高度医療サービスと百貨店並みのホスピタリティーの提供が求められている。働くものの立場からいえば,病院という職場が明らかに居心地のよい,長く勤めたい職場ではなくなっている。しかも収入は,はるかに自由な時間のとれる開業医に比べ,著しく低水準に抑えられている。
これらのすべての診療科に当てはまる問題点に加えて,以下に挙げるような付加的なマイナス要因によって,日本では産婦人科はおそらく最も条件の悪い診療科となっており,その結果,産婦人科医師数は減少し,分娩施設の急速な減少が起きている。
本稿では,これらの問題に関するいくつかの重要な問題点を挙げるとともに,考えられる産科医療改革の対策について検討する。
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