徹底分析シリーズ 緩和医療を考える
在宅緩和ケアの7年,その苦労とやりがい
井尾 和雄
1
Kazuo IO
1
1井尾クリニック
pp.256-258
発行日 2007年3月1日
Published Date 2007/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100242
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なぜ在宅緩和ケアを始めたか
1984年麻酔科に入局後10年を手術室で過ごしてきた。指導医も取り,今後も麻酔で食べていこうと思っていた。1995年の阪神大震災の前夜,内科医であった父が肝臓癌で熊本の病院の一部屋で死んだ。癌が見つかって3か月,無念の死だった。日本の緩和ケアのお粗末さ,患者や家族に配慮のない終末期医療の未熟さを知った。「病院は死に場所じゃない」ことがはっきりした。
ホスピスを建てようと決心した。日本中のホスピスを見て歩き,アメリカにも行ってみた。2度建てるチャンスがきたが,地主の無理解で流れた。そんな時,あるアンケートが目に留まった。癌の末期で過ごしたい場所はどこかとの問いに半数以上が「自宅」と答えていた。これだと思った。お金もかからないし,一人でも始められる。しばらく緩和ケアや在宅医療を勉強し,2000年2月,外来なし,24時間365日対応の訪問診療のみの診療所を開業した。
今は在宅ホスピスで正解だったと思っている。なぜなら施設ホスピスは癌とエイズの末期だけだが,在宅は緩和ケアを必要とするすべての患者を受け入れられるから。
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