特集2❷ ERスタンダード 気道管理—自信がついてきた頃が一番コワイ!
【Part 2】各論
5.酸素化を保てない重症肺炎—陽圧を用いた前酸素化と,慎重な薬剤使用がポイント!
春日 武史
1
,
片岡 惇
1
Takeshi KASUGA
1
,
Jun KATAOKA
1
1練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
pp.944-948
発行日 2025年3月25日
Published Date 2025/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.275835970020060944
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救急外来およびICUでの緊急気管挿管では,手術室での予定された挿管と比較し,重度の合併症が多く発生しうる。国際的な前向き観察研究であるINTUBE*1試験1)では,緊急挿管症例においてSpO2(経皮的酸素飽和度)が80%以下となる重症低酸素は9.3%,心停止は3.1%に生じると報告されている。しかしこれらの合併症のリスクは,通常酸素投与で酸素化が保てないなかでの緊急挿管においては,上記以上であると考えるべきだろう(挿管に慣れている筆者らでも,重度の低酸素血症の緊急挿管は非常に緊張するものである)。
本稿では症例をもとに,「酸素化を保てない重症肺炎患者に,いかに挿管するか」について,2つの命題に分けて説明する。1つは,そもそも通常酸素投与で酸素化が保てていないなかで,どのように挿管に進むかということ,つまり「前酸素化をいかに行うか」である。もう1つは前者とも関わるが,著明な自発呼吸(頻呼吸と努力様呼吸)があるなかで,気管挿管のために鎮静薬(±筋弛緩薬)を投与して自発呼吸が弱まった(もしくは止めた)場合に,さらに低酸素が悪化し心停止に至る可能性を考えるべきであり,「薬剤(鎮静薬,筋弛緩薬)をどのように投与しながら挿管を行うか」という命題である。

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