特集 第9回中枢神経系の生理学シンポジウム
脳内カテコールアミンに就いて
吉田 博
1
Hiroshi Yoshida
1
1大阪大学医学部薬理学教室
1Dept. of Pharmacology, Osaka University School of Medicine
pp.2-9
発行日 1963年2月15日
Published Date 1963/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906262
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カテコールアミン(C. A. と以下略記する)は先ず副腎髄質に存在し,そこから分泌されるホルモンとして認識されたが,その後交感神経末端に於ける神経伝達物質としての役割をも担つていることが明らかになつた。更に最近になりC. A. はかなり高濃度に脳内にも存在して種々の中枢神経機能に重要な影響を与えていると考えられるようになつた。第1表に一例を示したがnoradrenaline(NA)は主としてhypothalamusに局在しdopamine(DA)は主にputamen,caudate nucleusに存在している1〜4)。DAはNAの前駆物質であるが,このように全く異つた分布を示すことはDAが単なるNAの前駆物質ではなく独立した作用物質である可能性を示唆し,例えばその分布より錐体外路系に何らかの役割を果しているのではないかと想像される。adrenaline(A)は哺乳動物の脳には殆んど存在していない4)5)。
この脳内に存在するC. A. の研究には種々の方法があるが,私は主に生化学的面からの追求について述べてゆきたいと思う。C. A. の存在が末梢臓器(脳以外の臓器を総称した)で先ず見出された後脳でも見出されたのに相呼応して,一般にC. A. の研究は末梢臓器で始められ進められそれが如何に脳に当てはめ得るか,如何にmodifyされるかといつたやり方で進められてきた。
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