Japanese
English
綜説
腺分泌の超微形態学—特に皮膚腺について
Submicroscopic Morphology of the Secretion, with Special Reference to the Skin Glands
黒住 一昌
1
Kazumasa Kurosumi
1
1群馬大学医学部解剖学教室
1Department of Anatomy, Gumma University School of Medicine
pp.214-227
発行日 1960年10月15日
Published Date 1960/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906148
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.緒言
腺の分泌機構に関しては,光学顕微鏡による数多くの業蹟が従来発表されてはいるが,光学顕微鏡の宿命ともいうべき分解能の制限によつて,超顕微鏡的なオーダーに於ける腺細胞の形態変化とその機能的意義付けは,全く推察の域を脱し得ない状態であつた。電子顕微鏡の出現と超薄切片法の確立は,このような光学顕微鏡的細胞学の行きづまりを打開し,細胞の形態と機能の関連を全く新しい見地から再検討する可能性を提示した。
電子顕微鏡による細胞学はまだ発達の途上にあり,種々の不完全さや誤つた解釈が残つているとはいえ,細胞構造をより細かに観察するという純形態学的な立場から一歩を進めて,細胞機能のメカニズムを超微形態学的基礎に基づいて論ずるという動的なものに変つて来ている。ただし,電子顕微鏡像は機能的変動に伴つてたえ間なく変化する細胞超微細構造の1瞬の断面を把えたものに過ぎず,生体を対象にして時間と共に追究することは不可能である。そこに電子顕微鏡の避けられない弱点が存するのであるが,実験的に機能を抑制又は促進させ,それに伴う変化を時を追うて把えることは可能であり,電子顕微鏡観察と並行した光学顕微鏡による組織化学的検索,分画遠心法や放射性同位元素を利用した生化学的研究は電顕像の解釈の正確を期する上に極めて有用であり,現にこのような並行研究が腺分泌の機構解明に少なからず役立つている。
Copyright © 1960, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.