報告
Zotterman教授
萩原 生長
1
1東京医歯大生理学教室
pp.213-214
発行日 1959年8月15日
Published Date 1959/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906088
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本年4月の日本医学会総会に招待講演者としてスウエーデンからY.Zotterman教授が来日した。教授は1898年生れで現在61歳,カロライン医科大学(Karolinska Institutet)を卒業して以来生理学特に神経生理学の分野にパイオニヤーとして多くの業績を残している。現在迄に彼に依つて発表された此の方面の論文の数は120を越えているが,その多くは既に我国に於ても広く人の知るところである。そうした彼の仕事の方向を決定的にしたものは若い時代の英国Cambridge大学への留学であつた様に思われる。そこで彼はAdrian教授と共に皮膚神経た就いて始めて所謂単一神経線維インパルスの分離記録に成功し感覚の末梢神経機構研究の端緒を開いたのである。Adrian教授は其の後此の種一連の仕事に依つてNobel賞を与えられた事は人の良く知るところである。一方Zotterman教授は其の後やはり此の種の仕事を発展させ触覚や圧覚並びに痛覚等主として皮膚感覚の神経機構を更に詳細に研究した。本年3月末に開かれた日本生理学会に於ける教授の特別講演は其の内痛覚に感する教授の一連の研究を歴史的にふりかえつたものであつた。更に教授は十数年前より舌の温度感覚並びに味覚の研究を始め従来不明であった此の分野の解明に成功した。
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