Japanese
English
展望
Nitrogen Mustardの作用機構
On the mechanism of biolagical action of Nitrogen Mustards
櫻井 欽夫
1
Yoshio SAKURAI
1
1薬理研究会研究所
1Iatrochemical Institute of the Pharmacological Research Foundation
pp.230-237
発行日 1954年4月15日
Published Date 1954/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905770
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第一次大戦の後半に現われて世界を驚かせた独軍の毒ガスYperitが 後日癌の藥物治療の研究の端緒を開くものであつたとは当時何者も想像し得なかつたであろう。大戦は1918年に終り,此様な毒ガスの存在をめぐつて軍事,政治或いは人道上の様々の批判と対策が論じ続けられたのであるが,一方自然科学の領域に於ても亦此新しい毒物は軍陣医学の範囲を超えて広く生物学の中に新しい知見を導きいれる事になつた。
瘤研究の歴史の中で1930年代と云えば英国に於けるあの有名な癌原性炭化水素に関する華々しい研究が実りつつあつた時であり,同じく1932年にはわが佐々木,吉田両氏によつてO-Amidoazotoluolによるネズミ肝癌の発生が報ぜられた。化学が癌研究の歴史の中にはじめて深く接触をはじめた此当時に早くもI. Berenblum1)は発癌物質を用いてする動物の実験的発癌をYperit,即ちBis-β-chloroethyl-sulfide〔Ⅰ〕により抑制する実験を行つた。同じ年にF. E. Adair, H. J. Bagg2)等は此化合物を用いて自然発生癌の抑制に関する実験も報告して居る。
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