展望
ATP
吉川 春壽
1
1東京大學醫學部生化學教室
pp.2-8
発行日 1952年8月15日
Published Date 1952/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905661
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.ATP.ADP.AMP
ATPはアデノシン三燐酸Adenosine triphosphateの頭文字三つをとつた略語で,この物質はアデニン,リボーゼ各1分子,及び3分子の燐酸から成るところの一種のヌクレオチードである。
ATPの端の燐酸1個のはずれものがアデノシン二燐酸Adenosin diphosphate.で,略してADP.という。さらにもう1個燐酸のはずれたものが昔から知られていた。アデニール酸Adenylic acidであつてアデノシンー燐酸に他ならないのであるからAdenosile monophosphateの頭文字をとつてAMPと略稱するのが普通である。ATPはアデニール酸とピロ燐酸との化合物でもあるのでアデニールピロ燐酸Adenyl pyrophosphateともいう。新鮮な筋肉の浸出液の中から分離されたアデニール酸はアデニン-9'β-D-リボフラノシドのアデノシンのモノ燐酸エステルで,燐酸の結合位置はリボーゼの5の炭素の位置にある,アデノシン-5'燐酸である。これを筋肉アデニール酸と稱している。これは酵母から得られた酵母核酸の加水分解で得られたアデノシン-3'-燐酸と區別するためである。アデノシン-3'燐酸は筋肉アデニール酸とちがつて,生物學的活性はない。
Copyright © 1952, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.