論述
病理形態學から見たアミノ酸單獨投與および所謂アミノ酸平衡—ヒスチヂン代謝に関連して
新井 恒人
1
1和歌山医大病理学教室
pp.49-52
発行日 1950年10月15日
Published Date 1950/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905536
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まえがき
我々生体に蛋白質乃至アミノ酸が極めて重要な地位を占めることは周知の事実であつて,就中アミノ酸の生体内代謝は生体の生活現象乃至生理的過程に緊要な役割を演じていると考えられる.從つて若しアミノ酸代謝過程に,特に長期に亘つて異常状態が持続した場合には,当然異常な生活現象として疾病の発症が考慮されることとなる.從來生化学的乃至栄養学的の多数の研究業蹟は種々の興味ある重要な事実を物語つているが,斯かる目覚ましい化学的の研究成果に比べ,生体内アミノ酸代謝乃至疾病発症の病理形態学的研究に就ては,其の研究方法の困難なために一般に業蹟に乏しいようである.筆者は予て病理形態学的乃至組織化学的立場から研究を進めつつあるが,ヒスチヂン代謝に就て其の單独投與の生体に及ぼす影響乃至他種アミノ酸との併合投興実驗,所謂アミノ酸平衡に就て若干の知見を述べたいと思う.
ヒスチヂンは從來必須アミノ酸の一つとして知られて居たが,近年Roseの見解によれば人間には不可欠のアミノ酸ではなく,欠いても差支えないといわれているものである.併し之は若干疑問といわざるを得ないのであつて,一定期間の栄養試驗のみを以つて必須性を云々するのは些か尚早の感があり,事実生化学方面に於て近時ヒスチヂンがアルカリ性燐酸酵素の助酵素的意義をするとの研究1)があり,從つて相当の意義乃至必須性が認められるとの見解2)等,一概に必須アミノ酸から除外し得ないように思われる.
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