報告
ヒスチヂン投與による甲状腺腫の發生(ヒスチヂン甲状腺腫)について—ヒスチヂン代謝に關連して
新井 恒人
1
1和歌山醫大病理學教室
pp.35-38
発行日 1951年8月15日
Published Date 1951/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905601
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まえがき
筆者はかねて病理形態學の立場から,イミダゾール核を有する鹽基性アミノ酸ヒスチヂン生體内代謝について研究しつつあり,その成績の一部,例えばヒスチヂン單獨投與の生體に及ぼす障碍作用,他種アミノ酸との併合投與—所謂アミノ酸平衡—との關係,ヒスチヂンの誘導體ウロカニン酸尿中排泄との關係,今氏銀反應にょる生體内代謝の組織化學的研究等について報告した1)−5)。
さてKapeller-Adler6)の研究以來,妊娠,月經時及思春期等には,尿中ヒスチヂンの排泄量が著しく増加する事實が生化學的に研究されており,ヒスチヂン代謝と内分泌腺の機能との間に密接な關係が豫想される。從つてヒスチヂンの長期投與,特に微量連續長期投與が各内分泌腺に相當の影響を及ぼすことが期待されるが,筆者はウサギへの投與實驗に於て,各内分泌腺に興味ある所見7),特に著明な甲状腺腫の發生を見た。本成績は單獨のアミノ酸投與にょる甲状腺腫の發生,換言すれば甲状腺腫の成因に重大な事實を與えると共に,アミノ酸代謝が内分泌系に著しい影響を及ぼす事實と考えられるので,目下研究續行中であるが,その要點を報告することとする。
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