巻頭言
綜合研究について
平沢 興
1
1京都大学
pp.193
発行日 1958年6月15日
Published Date 1958/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906016
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近来綜合研究が次第に盛んになりつつあることは,学界のために慶賀にたえない。しかし,いわゆる綜合研究が内容的に真に綜合的になつているか否かを考えると,手離しで喜んでだけはおれぬ。日本での現段階における綜合研究は,実は真に質的に綜合的であるというよりは,似たような方面に興味を有するものが,雑然と自分の好きな問題を持ちよつて,勝手に自分の好きな角度から研究しているだけのことである。時には綜合研究は,ただ研究費を得る方便のことさえあるようである。
しかし,それでも私はただPriorityだけを問題として先陣争に血眼になり過ぎた傾向の多かつた昔に較べれば,大きな進歩だと思う。そこには世界の流れにおける時の力があり,我々の力だけによる進歩ではないが,たとえ受け身にせよ,それはそれなりに意味を持つことである。
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