巻頭
窮乏時に於ける基礎醫學の研究
坂本 島嶺
1
1東大・醫學部生理學教室
pp.176
発行日 1950年1月15日
Published Date 1950/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905483
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自然科學の研究が盛になることは文化國に相應しいことであり,又基礎醫學が人類の福祉に貢献する重要な自然科學であることはいう迄もない。勿論物質に關する物理學及び化學は頗る重要な基礎的な科學として認められているが,これ等と對照して生體に關する生物理學(biophysic)及び生化學の人生に影響する價値を考えて見るならば,心ある者は後者が前者に優るとも劣らないと判斷するであろう。しからば斯くの如く有意義な基礎醫學の研究をこの窮乏した經濟状態に於て如何にして又如何なる心構えで續けて行くべきか又如何なることを關係機關(學術會議,文部當局等)に希望すべきか。
これに對する解答を要約すれば「窮乏時に於ても平常時に持つていなければならない心構えで眞面目に研究する。そしてそれに相應しい處置を關係機關に希望する」ことである。しかしわが國に於ては勿論,外國に於ても大切な時期に輕はずみの多數の人の意見が勝を制して少數の人の正しい意見が顧みられなかつた例がないとは言われないから(その動機は多くの人々が落着きを失つたためであろう)同じようなことが我々自然科學者間に起らないよう萬全を期するために特にこの窮乏時に於ける我々の研究について少しく立入つて考えて見度い。
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