境界領域 精神科から
産婦人科領域に於ける精神醫學
鹽入 圓祐
1
1慶大醫學部神經科
pp.447-452
発行日 1950年11月10日
Published Date 1950/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200408
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒言
比較的最近まで,精神病學は隣接の諸臨床部門と關係が薄く,産婦人科領域に對しても例外ではなかつた。併し乍らこの20年間にあつて,精神病學は長足の進歩を遂げ,不治であるとされた精神分裂病に有效な治療法が相次いで發見されると共に殊に,最近では精神身體醫學が登場し,隣接各科との接觸はとみに緊密を加えて來た。本稿ではこの新しい精神醫學の立場から,産婦人科とのつながりに概觀を與えたいと思う。
從來この科で問題となつた精神疾患は,妊娠性精神病と月經性精神病並に子癇が主なものである。併しこれらの獨立疾患が存在するという考え方は段々と根據がうすくなり,それは妊娠等に際して 1)内因性精神病(精神分裂病,躁鬱病及び癲 癇)が誘發されたものか 2)内因性精神病が反應的に(換言すれば頓坐 的に)現われるものか 3)妊娠中毒による症候性精神病であるかのいづれかを考えねばならなくなつてきたからであり,更に 4)妊娠中毒或は退行期,月經期等の身體的變 調に關連して起つてきた精神症樣障碍ではな いかということが重要な問題となつたからである。
Copyright © 1950, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.